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腸活が認知症予防につながる? 〜ビフィズス菌と脳の最新研究〜

日本は世界でも類を見ない超高齢社会を迎えています。

平均寿命は延びていますが、多くの方が気にしているのが「健康寿命」、つまり自立した生活を送れる期間です。

その健康寿命を脅かす大きな要因の一つが認知症です。

近年の研究では、認知症予防の新たなアプローチとして「腸活」が注目されています。特に、腸内細菌の一種であるビフィズス菌が脳の健康に良い影響を与える可能性が報告されるようになりました。

今回は、軽度認知障害(MCI)を対象に行われた最新の研究をもとに、腸と脳の関係について解説します。

〇腸は「第二の脳」と呼ばれている

私たちの腸には非常に多くの神経細胞が存在しており、「セカンドブレイン(第二の脳)」とも呼ばれています。

近年では、腸と脳が神経やホルモン、免疫を介して密接につながっていることが分かっており、これを「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」と呼びます。

さらに最近では、

・認知機能
・筋力(サルコペニア)
・免疫機能
・皮膚の状態(シミや肌老化)

などにも腸内環境が関与していることが明らかになってきました。

この関係は「腸脳皮膚相関」とも呼ばれ、美容やアンチエイジングの分野でも大きな注目を集めています。

〇加齢とともに減少するビフィズス菌

腸内には100兆個以上の細菌が存在するといわれています。

その中でも健康維持に重要な役割を担うのがビフィズス菌です。

ビフィズス菌は乳児期に最も多く存在しますが、加齢とともに減少し、高齢になると急激に少なくなることが知られています。

興味深いことに、アルツハイマー病患者では腸内細菌の多様性が低下し、ビフィズス菌の割合が少ないことが報告されています。

このことから、ビフィズス菌の減少が認知機能低下に関係している可能性が考えられています。

〇軽度認知障害(MCI)とは?

認知症は突然発症するわけではありません。

多くの場合、

正常な認知機能

軽度認知障害(MCI)

認知症

という経過をたどります。

MCIは、物忘れなどの認知機能低下はみられるものの、日常生活はほぼ自立している状態です。

重要なのは、この段階であれば改善できる可能性があることです。

実際にMCIの方の一部は正常な状態に回復することが報告されています。

そのため、現在の認知症予防ではMCIの段階で介入することが非常に重要と考えられています。

〇ビフィズス菌MCC1274株を用いた臨床試験

今回紹介する研究では、65歳以上のMCI患者を対象に、ビフィズス菌MCC1274株の効果が検証されました。

研究方法は非常に信頼性の高いランダム化比較試験(RCT)です。

参加者を2つのグループに分け、

・ビフィズス菌MCC1274株を摂取する群
・プラセボ(偽薬)を摂取する群

を比較しました。

摂取期間は6か月間です。

研究の結果、ビフィズス菌MCC1274株を摂取したグループでは、「見当識」と呼ばれる認知機能が改善しました。

見当識とは、

・今日が何月何日か分かる
・今いる場所が分かる
・周囲の状況を正しく認識できる

といった能力です。

認知症では比較的早い段階から低下することが知られているため、この改善は非常に重要な結果と考えられています。

さらに興味深い結果として、脳MRIによる評価では、プラセボ群では半年間で軽度の脳萎縮が進行したのに対し、ビフィズス菌摂取群では脳萎縮の進行が抑制されていました。

つまり、腸活が単に認知機能に影響するだけでなく、脳そのものの構造変化にも影響する可能性が示されたのです。

〇なぜビフィズス菌が脳に良いのか?

研究ではいくつかのメカニズムが考えられています。

① アミロイドβの蓄積を抑える

アルツハイマー病では、「アミロイドβ」という異常なたんぱく質が脳内に蓄積することが知られています。

動物実験では、MCC1274株の摂取によって海馬でのアミロイドβ蓄積が減少することが確認されています。

② 脳の炎症を抑える

認知症では脳内の慢性炎症も重要な問題です。

MCC1274株は脳内の炎症を引き起こすサイトカインの産生を抑え、炎症反応を軽減する可能性が示されています。

③ 記憶に重要なシナプスを守る

記憶や学習には神経細胞同士をつなぐ「シナプス」が重要です。

MCC1274株はシナプス関連タンパク質の発現を増やし、神経細胞間の情報伝達を維持する可能性が報告されています。

〇実は菌そのものではなく「代謝産物」が重要?

今回の研究で興味深かったのは、ビフィズス菌を摂取しても腸内細菌全体の構成には大きな変化がみられなかったことです。

つまり効果の本体は、

・菌そのもの
・菌体成分
・菌が作り出す代謝産物

である可能性があります。

例えばMCC1274株は、大豆イソフラボンを体内で利用しやすい形に変換する能力が高いことが知られています。

こうした代謝産物が全身の抗炎症作用や抗酸化作用を高め、その結果として脳機能に良い影響を与えている可能性が考えられています。

☆まとめ

近年の研究により、腸と脳は密接につながっていることが明らかになってきました。

特にビフィズス菌MCC1274株を用いた研究では、

・認知機能の改善
・見当識の向上
・脳萎縮の進行抑制

が確認されており、腸活が認知症予防の新たな選択肢となる可能性が示されています。

認知症になってから治療するのではなく、MCIの段階で介入することが今後ますます重要になると考えられています。

食事や生活習慣を見直し、腸内環境を整えることは、将来の脳の健康を守るための第一歩かもしれません。

「健康長寿は腸から始まる」

そんな時代が、すでに始まっているのかもしれません。

統括部長 牧野莉央