「最近、髪のボリュームが減ってきた気がする」 「産後から抜け毛が増えて戻らない」 「AGA治療って本当に安全なの?」
薄毛や抜け毛のお悩みは非常に身近なものですが、インターネット上にはさまざまな情報があふれており、何が正しいのかわからなくなってしまう方も少なくありません。
先日参加した美容皮膚科学会では、AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性型脱毛症)についての最新の知見が数多く発表されていました。
なかでも印象的だったのは、女性の薄毛や産後脱毛症におけるアンドロゲン(男性ホルモン)の関与、ミノキシジル内服療法の安全性、そして近年注目されている再生医療の現状についてです。
今回は学会で学んだ内容をもとに、一宮スキンケアクリニックで日々ご相談の多いAGA・FAGAについてわかりやすくお話しします。
AGAとFAGAはどんな脱毛症?
AGA(Androgenetic Alopecia)は男性型脱毛症、FAGA(Female Androgenetic Alopecia)は女性型脱毛症を指します。
どちらも遺伝的な要因やホルモンの影響によって毛髪の成長サイクルが乱れ、髪が十分に成長する前に抜けてしまうことで徐々に薄毛が進行します。
近年の研究では、女性の脱毛症にもアンドロゲンが関与していることがわかってきました。
さらに学会では、これまで一時的なホルモン変化として考えられていた産後脱毛症についても、アンドロゲンとの関連が議論されており、FAGAの一つとして捉える考え方が広がりつつあることが紹介されていました。
AGA治療の基本はDHTを抑えること
AGAでは男性ホルモンのテストステロンが、5α還元酵素によってDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されることが発症に深く関与しています。
そのため治療の中心となるのが、
- フィナステリド
- デュタステリド
です。
これらは5α還元酵素を阻害し、DHTの産生を抑えることで脱毛の進行を抑える治療です。
当院でもAGA治療の基本としてご案内しており、効果が十分でない場合には追加治療としてミノキシジルを検討することがあります。
「男性ホルモンが減る」は本当?
AGA治療について調べると、
「男性ホルモンが減る」 「性機能に影響する」
という話を目にすることがあります。
しかし近年では、フィナステリドやデュタステリドはテストステロンそのものを低下させる薬ではないことが広く認識されるようになってきています。
また学会で紹介されていた興味深い報告では、
- 性関連副作用が起こる可能性をあらかじめ説明された群では43.6%
- 副作用の説明を受けていない群では15.3%
に性関連副作用がみられたとされています。
これは「ノセボ効果」と呼ばれる現象で、不安や思い込みによって症状が強く感じられる場合があることを示しています。
もちろん副作用への理解は大切ですが、必要以上に不安にならなくてもよいということも知っておきたいポイントです。
FAGA治療の第一選択はミノキシジル
女性型脱毛症(FAGA)では、現在ミノキシジルが第一選択の治療として広く使用されています。
ミノキシジルには外用薬と内服薬があり、毛髪の成長を促すことで髪のボリューム改善が期待されます。
また学会では、女性のFAGA患者に対するミノキシジル内服とスピロノラクトン内服を比較した報告についても紹介されており、有意な差は認められなかったとされていました。
スピロノラクトンとはどんな薬?
スピロノラクトンは本来、高血圧や心不全などの治療に使用されるカリウム保持性利尿薬です。
一方で、
- アンドロゲン受容体を阻害する作用
- 抗アンドロゲン作用
を持つため、FAGAに対する未承認治療として使用されることがあります。
副作用としては、
- 生理不順
- 高カリウム血症
などが知られています。
また男性では女性化乳房や男性更年期様症状の原因となることがあるため、適応には注意が必要です。
ミノキシジル内服は安全なの?
ミノキシジル内服療法についても近年多くのデータが蓄積されています。
代表的な副作用としては、
- 多毛
- むくみ
- 浮腫
- 動悸
- 胸部違和感
などがあります。
多毛は副作用として知られていますが、その発毛作用を応用して毛髪治療にも利用されています。
学会では、1日5mg以下の低用量ミノキシジル内服では重篤な副作用の報告は少ないことも紹介されていました。
また動悸や胸部違和感については自然に軽快するケースも報告されています。
ただし、
- 重篤な心疾患
- 不整脈の既往
がある方には慎重な判断が必要です。
当院でも問診や既往歴を確認したうえで治療をご提案しています。
インターネット購入の治療薬には注意
AGA治療薬はインターネットでも購入できる時代になりました。
しかし学会では、流通している治療薬の一部には偽造品が含まれることが報告されていました。
なかには約40%が偽造品だったという報告もあり、効果が期待できないだけでなく健康被害につながる可能性も指摘されています。
薄毛治療は継続が重要だからこそ、安全性が確認された治療を医療機関で受けることが大切です。
PRPやエクソソームなどの再生医療はどう考える?
最近は脱毛症治療の分野でも、
- PRP療法
- エクソソーム
- 幹細胞治療
- 培養上清液
- 成長因子療法
などの再生医療が注目されています。
新しい治療として期待されていますが、今回の学会でも現時点では有効性や安全性に関する十分なエビデンスは確立されていないことが強調されていました。
また費用が高額になることも多く、慎重な判断が必要な治療領域です。
まとめ
今回の美容皮膚科学会では、AGA・FAGA治療が着実に進歩している一方で、確立された治療と今後の検証が必要な治療をしっかり区別することの重要性を改めて感じました。
男性ではフィナステリドやデュタステリド、女性ではミノキシジルを中心とした治療が現在の標準的な選択肢です。
抜け毛や薄毛が気になり始めた方は、「まだ相談するほどではないかな」と思わず、お気軽にご相談ください。
院長 髙田健正
