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あざの鑑別と治療

美容皮膚科学会に参加し、茶あざ・赤あざを含む色素性病変と血管性病変について、改めて整理する機会がありました。 日常診療でも遭遇することの多い領域ですが、細かな鑑別や治療反応の違いを再確認することで、診療の質をさらに高められると感じています。 以下に、今回学び直した内容をまとめます。

 

茶あざ(茶色斑)の鑑別

茶あざは一見似た所見でも、背景となる病態が大きく異なります。 孤立性か多発性か、境界の形状、発症時期、毛の有無、ダーモスコピー所見などを丁寧に評価することが重要です。

 

孤立性・限局性病変

■ 扁平母斑

出生時〜幼少期に出現し、健常人の10〜20%にみられます。 症候群の一症状として生じる場合は「カフェオレ斑」と呼び、6個以上存在する場合は神経線維腫症1型(NF1)を疑います。

治療反応には幅があり、学会でも以下の傾向が示されていました。

  • 75〜100%改善:3割程度

  • 50〜100%改善:5割程度

  • 再発:6割前後

ピコレーザーの方が良いかという質問は多いものの、 ナノ秒レーザーでも有効性・再発率・有害事象に大差なしという点は従来通りです。

また、

  • 地図状病変は比較的反応良好

  • 円形病変は有効率20%程度と乏しい という点も再確認されました。 試験照射を行ってから全照射するなど、治療計画の工夫が必要です。

 

■ 点状集簇性母斑

先天性色素性母斑との鑑別はダーモスコピーが有用で、レーザー反応は乏しい傾向があります。

 

■ ベッカー母斑

思春期前後に発症し、男性に多く、多毛を伴うことが半数程度あります。 レーザー治療が比較的有効ですが、扁平母斑とは発症機序が異なります。

 

多発する茶あざ

■ 神経線維腫症1型(NF1)

扁平母斑が6個以上ある場合に疑います。 出生時〜幼児期に出現し、学童期まで増加します。 診断基準として、

  • 思春期前:最大径5mm以上

  • 思春期後:最大径15mm以上 が用いられます。

レーザー治療は孤発性カフェオレ斑より有効率が低いです。

 

■ Blaschko線に沿う色素斑(LWNH)

出生時〜乳幼児期に発症し、2歳以降は進行が停止します。 形態が特徴的で、鑑別に重要です。

 

■ 色素失調症

女児に多く、X連鎖遺伝。 消退しにくい例もあり、経過観察が必要です。

 


 

茶あざと間違えやすい疾患

■ 色素性蕁麻疹

レーザー照射に不応で気づくことが多く、照射で搔痒や水疱(ダリエー徴候)が出現します。 成人発症例では全身検索が必要です。

■ 固定薬疹後色素沈着

NSAIDs、アセトアミノフェン、トラネキサム酸、カルボシステインなどが原因となることがあります。 薬剤歴の確認が不可欠です。

 

赤あざ(血管性病変)の鑑別と治療

赤あざは「脈管性腫瘍」と「脈管性奇形」に大別されます。 病態が異なるため、治療選択も異なります。

 

脈管性腫瘍

■ 乳児血管腫

GLUT-1陽性の毛細血管内皮細胞が増殖する腫瘍で、日本人では約1%。 出生後3か月以内に急速増大し、その後自然退縮しますが、繊維腫瘍として残存することがあります。

腫瘤型・皮下型は後遺症(組織欠損、血管拡張、皮膚萎縮、瘢痕)が問題となることが多い点も再確認されました。

■ 先天性血管腫

出生時にピークアウトしていることが多く、乳児血管腫とは病態が異なります。

 

脈管性奇形

■ 毛細血管奇形

色素レーザーが第一選択。 病変の範囲や深さにより治療回数は変動します。

■ 動静脈奇形

進行性で、塞栓術・硬化療法が中心となります。 外科的治療を併用することもあります。

今回の学会では、あざの鑑別と治療に関する細かな知見を整理することができました。 茶あざ・赤あざは見た目が似ていても背景となる病態は大きく異なり、 診断には発症時期、形状、境界、毛の有無、ダーモスコピー、薬剤歴などを総合的に評価する必要があります。

そして、改めて強く感じたのは、 あざの治療は非常に個別性が高く、患者さんの希望も一人ひとり異なるということです。 どこまでの改善を望むのか、どのような経過を許容できるのか、生活背景や価値観はどうか。 それらを丁寧に伺い、治療のゴールを見据えながら、希望に沿った診療を行うことが私たちの使命であると再認識しました。

院長 髙田健正